第39回少年の主張 福島県大会 最優秀賞

「ハイタッチ」

須賀川市立西袋中学校 3年 佐久間 桃

 突然ですが、皆さんは、いつ、どんな時に「ハイタッチ」をしますか。

 勝負事に勝った時、何かに成功した時など、その場面は様々です。この「ハイタッチ」は、よく考えてみれば必ず2人以上でするものです。1人で手と手を合わせても、それはただの拍手にしかなりません。では、「ハイタッチ」は、何のためにするのでしょうか。私が、その意味について深く考えさせられたのは、部活動を引退する間際のことでした。

 1年前の、部活動での大会の時のことです。「ごめんね。」と言って差し出されたペアの手に、私は背を向けてしまいました。通常、ソフトテニスの試合では、どちらかに点数が入るごとに、ペアでハイタッチをします。しかし、その時の私は、ペアの些細なミスに腹を立て、ハイタッチすることを無言で拒否してしまったのです。そこからは、自分自身のプレーがうまくいかない苛立ちも重なり、目を合わせなくなった私達の壁は、ますます大きくなっていきました。そして、その試合は、当然ながら、自分達のミスの連続により、負けてしまいました。

 この惨敗によって、私達はお互いに声を掛けることの大切さを学び、それから試合中に何度も何度もハイタッチをするようになりました。2人の連携プレーで取った1点に「喜びのハイタッチ」。次はあのコースに打とうという、「作戦のハイタッチ」。ミスをカバーしてくれてありがとうという、「感謝のハイタッチ」・・・。ハイタッチの回数が増えると共に、試合中に意見を交わす機会が増え、私達の息はぴったりと合うようになったのです。すると、面白いように、勝つ回数も増えていきました。

 なぜ『ハイタッチ』をするのでしょうか?その答えは簡単です。ハイタッチをすることによって、自分の思いを伝えたいからです。そして、相手の気持ちを受け取りたいからです。「ハイタッチ」とは、やはり不思議なものです。手と手を合わせる、たったそれだけの動作なのに、2人の温かい気持ちの仲立ちをして、互いの心をつなぎ合わせてくれるのです。なんだか、理科の実験で使う、導線のように思えてきませんか。

 私は、人は、誰かと交流して感情を分かち合いながら生きていくべきだと思います。例え、感情を分かち合った結果、悲しみや苦しさしか得られなかったとしても、その経験から学ぶものがあるはずだからです。

 最近、様々なニュースを耳にしますが、直接気持ちをぶつけ合えば防げる事件もあるように感じます。例えば、皆さんは、中学生のSNSによるいじめが増えていることを知っていますか?その原因の一つに、文字のみで感情を伝え合う難しさがあります。SNSのような文字だけの会話では、相手の口調や表情が全く読み取れません。ある研究によると、感情は、文字のみで伝えると相手に7%しか伝わらないそうです。直接目と目を合わせて会話し、相手が全身で伝えようとしている思いを受け取ることで理解し合えたならば、きっとトラブルも防げるのではないでしょうか。

 もしあなたが、何かに迷い、どうしようもなくなってしまったならば、誰かと手と手を合わせてみてください。たったそれだけの動作で、「自分は1人ではない!」と感じることができるかもしれません。

 もし誰かが、迷い苦しみ、答えを求めて手を伸ばしていたのならば、そっとその手を受け止めてみてください。2人の手が合わさるその音が、迷いや苦しみを吹き飛ばすきっかけになり得るかもしれません。

 皆さんも、さあ、隣にいる人とハイタッチをしてみましょう。手と手が重なる瞬間、心と心が導線で結ばれる瞬間に、さて、何が伝わってきましたか?