令和2年度「家庭の日」作品コンクール 最優秀賞(中学・高学生の部)

じいちゃんが残してくれたもの

郡山市立郡山第二中学校 1年 笹山 千尋

 私には大好きなじいちゃんがいました。雪が降ったら私のために大きなかまくらを作ってくれたり、私をソリに乗せて引っ張ってくれたり、 補助輪なしで自転車に乗れるように一緒に練習に付き合ってくれる家族思いの優しいじいちゃんでした。おじいちゃんは野菜作りの名人でもありました。 うちの畑で、色々な種類の野菜を作っていました。春はキャベツやジャガイモ、夏はトウモロコシや枝豆、秋はカブ、冬は白菜、ねぎ、大根など、 美味しい野菜をたくさん食べることができました。じいちゃんが作る野菜はどれも大きくて形がきれいでした。きっと、一生懸命手間をかけて育てていたからだと思います。
 そんなじいちゃんでしたが、去年の五月に病気で亡くなりました。じいちゃんが亡くなってとても悲しかったし、今も寂しく感じています。じいちゃんが亡くなったことで、 家には大きな問題が発生しました。じいちゃんの畑をどうするかという問題です。それまで畑の野菜作りはじいちゃんが全部一人でやってくれていたので、残された私たちには、 野菜の種の植え方はもちろん、水のやり方も肥料のまき方もまったく分かりません。ですから、じいちゃんと同じような立派な野菜を作れるか分からず、不安でした。だけど、 じいちゃんが一生懸命野菜を作っていた大事な畑だから、家族みんなでがんばって守っていくことにしました。
 いざ野菜作りをしてみると、大変なことがたくさんありました。虫がいっぱいいるので、虫嫌いの私は虫におびえてばかりいました。作業中は暑くて、汗をいっぱいかきました。 野菜の育て方が分からず、あまりはきなれていない長靴での作業だったので、育ったばかりの芽をふんでしまったこともありました。特に大変だったのは、次から次に生えてくる雑草でした。
 ですから作り初めは、とにかく家族みんなでがむしゃらに取り組みました。お父さんやお母さんは、休みの日になると、汗びっしょりになりながら、 一日中畑の草むしりをやっていました。私と妹とばあちゃんは、近所の農家の人に教えてもらいながら、野菜が大きくなるようにと肥料をいっぱいまきました。
 うれしいこともありました。たくさんの人たちが応援に駆けつけてくれたのです。それは親戚や、近所の知り合い、おじいちゃんの友達でした。 私たちが畑の草に悩んでいると大きな機械を使って草むしりをしてくれたり、種のまき方を教えてくれたり、野菜の育て方を教えてくれたり、肥料をまくことを手伝ってくれました。 みんなの優しさが本当にうれしかったことを今でもはっきり覚えています。
 そうして、収穫の時期になり、初めて自分たちで育てた野菜を食べることができました。すごく美味しい!この時食べたジャガイモは、じいちゃんがつくったジャガイモと同じ味がしました。 とても優しくて懐かしい味です。何だか近くでじいちゃんが「どうだ、うまいか」と言って笑っているような気がしました。もちろん、うまくいかなかったこともありました。 トウモロコシは粒の大きさが揃っていなかったし、大きくなりませんでした。枝豆も育ちが悪かったのか、色がうすく、味があまりよくないものもありました。せっかくとれたジャガイモも、 私たちの保存の仕方が悪かったせいで、色が変わってしまい、食べることができなくなってしまいました。野菜を作ることの難しさがよく分かりましたし、 じいちゃんがとても苦労して野菜を作っていたのだということも分かりました。
 たくさんの失敗もありましたが、じいちゃんが残してくれた畑での野菜作りを通じて、家族みんなが同じ目的でいいものを作ろうとがんばることができました。それだけでなく、 親戚や近所の知り合いや、じいちゃんの友達など、たくさんの人が私たちを支えてくれていることが分かりました。収穫は野菜だけでなく、支えてくれるみんなの優しさも含まれていたのです。 ですから、失敗もたくさんあったけど、それでも家族みんなで、もっともっとがんばろうと思うことができました。
 見ててね、じいちゃん。来年はもっと美味しい野菜を作るからね。