令和2年度「家庭の日」作品コンクール 最優秀賞(5・6年の部)

最後のプレゼント

いわき市立平第五小学校 5年 鈴木 康太

「こんにちは、宅急便でーす。」
 四月二十六日、ぼくの家に荷物が届きました。段ボールを開けると、中には白い箱が入っていて、 ぼくはワクワクしながらその箱を開けました。
「あっ、ラグビーボールだ!。」
 ぼくはとてもびっくりしました。でも、送り主を知って腰を抜かすほど驚きました。それは、お父さんからだったからです。
 お父さんは、三月二十六日に亡くなりました。お父さんが病院で病気と闘っている間、 ぼく達兄弟は全くお父さんに会うことはできませんでした。お父さんが亡くなった事を、 おばさんからとつ然聞いても何が起きたのか、よく分かりませんでした。急に体が寒くなって呼吸がうまくできませんでした。 冷たくなって、動かなくなったお父さんを見て、ぼくは大きな声で泣きました。とてもつらい別れでした。
「きっと康太が新しいラグビーボールを欲しがっているのを知って、お父さんが入院しているときに注文してくれていたんだね。」
 お母さんも、お父さんがラグビーボールをひそかに注文していた事を知らなかったそうです。 でもお父さんが亡くなる直前に、ぼくの前のラグビーボールに穴が開いてしまい、新しいのを買ってやるかどうか、 相談をしていたそうです。ラグビーボールが家に届いた四月二十六日はお父さんの月命日でした。 ぼくはどうしてお父さんはわざわざ一か月先にボールが届くように注文したのか、不思議に思いました。
「きっと、ダメになれば何でもすぐ買ってもらえると思われたくなかったのかな。それとも何か頑張ったごほうびにしたかった のかもし れないね。それにしても月命日に届くなんて、お父さんらしいね。」
 ぼくはお母さんの言葉を聞いて、胸が熱くなりました。そこまでぼくのことを想ってくれていたお父さんの優しさに、 涙があふれてきました。でもせめてラグビーボールのお礼をお父さんに、直接伝えたかったです。 お父さんから送られたボールには、きれいな桜の花のもように、白い英語の文字が書いてありました。「ワンチーム。」
 ぼくはそれがお父さんからのメッセージのように思えました。お父さんと、お母さんと、お姉ちゃんと、健太と、ぼく康太。
「家族五人はいつまでもワンチームだよ。」
とボールがぼくに、話しかけているように思いました。病気でとても苦しいときも、 最後までぼく達のことを想ってくれていたお父さん。もっともっと話がしたかったです。
 お父さんがぼく達にくれた最後のプレゼントを、家族みんなでずっと大切にしていきたいです。お父さんのことを想いながら…。
   お父さん、本当にありがとう。